長期優良住宅とはどんな家?特徴やメリット・申請手順を紹介
「家は一生でもっとも高いお買い物」と、よくいわれます。
一軒家を建てるのに、土地代もあわせて数千万円もしますから、できるだけ長く安心して住み続けたいものですよね。
より長く住み続けられる住まいのカタチとして、最近多くなっているのが「長期優良住宅」という家。文字通り、長期間にわたって安心・快適に住み続けられる家のことですが、これに認定されるにはさまざまな条件をクリアする必要があります。
長期優良住宅とは、どんな家のことを指すのでしょうか。また、これに認定されるのに必要な条件とは何でしょうか。長期優良住宅で暮らすメリットと併せてお伝えします。
長期優良住宅とは、どんな家?
長期優良住宅とは、一般社団法人の住宅性能評価・表示協会が設ける「長期優良住宅認定制度」の基準をクリアし、認定を受けている家のことをいいます。
認定を受けるための基準ですが、「100年使用できる構造躯体」「大きな地震が襲っても倒れない」などいくつかの条件があります。まずはその条件を解説しましょう。
構造や設備が長期間使用できる家であること
構造躯体がしっかりしており耐震性に優れているほか、ライフスタイルの変化に応じた可変性やバリアフリーの観点からも、長く住み続けられる措置が講じられることが、長期優良住宅には求められます。
構造躯体の点では、100年以上使い続けられるような措置がされていることが条件。
木造住宅ならシロアリ対策、鉄筋などは錆び対策がしっかりされているなどの細かな規定があり、「劣化対策等級」という住宅性能表示制度で最高等級の3であることが求められます。
また耐震性では、大きな地震に襲われても損傷が少なく、補修すれば暮らせるような住まいであることが条件です。「耐震等級2以上」または「免震建築物」などが、クリアするための条件となっています。
このほか、ライフスタイルの変化に応じて間取りの変更が容易なこと、玄関のスロープ設置など、将来バリアフリーの改修工事ができることなども、長期優良住宅の認定に求められます。
居住環境等への配慮を行っていること
省エネ設備を備えていることや、景観に配慮したデザインになっていることなども条件の一つです。
省エネの観点では、国土交通省が定める「次世代省エネルギー基準」を満たす優れた断熱材を使用していること。これも住宅性能表示制度に「省エネルギー対策等級」というものがあって、等級4以上が求められます。
また、景観になじむ外観デザインにするなど、地域環境の維持・向上に配慮していることも条件です。
一定以上の面積があること
住宅の広さも条件の一つ。一戸建ての場合は75m2以上、床面積が40m2以上あるフロアが一つ以上あることが求められます。
維持保全の期間、方法を定めていること
長期優良住宅は、建てておしまいではなく、その家に住み始めてからも綿密な維持保全計画を立て、管理していくことも認定基準の一つです。
具体的には、定期メンテナンスや補修に関する計画を策定し、計画通りに実施していくことが条件。
また、配管の更新などもスムーズにできるように講じられていることもポイントです。
細かい点ですが、「床下空間の高さが330mm以上」という規定も、長期優良住宅の認定基準にあるのです。
このほか、耐用年数の短いとされる内装や設備も、維持管理のしやすい措置が講じられていることも求められます。
長期優良住宅のメリット一覧
安心して長く住み続けられることが長期優良住宅の大きなメリットですが、このほかにも長期優良住宅には、住宅ローン控除や税金の優遇などの点でも魅力的なメリットがあります。
長期優良住宅のメリット1:住宅ローン控除が最大500万円に
住宅ローンを利用される方は、所得税と住民税から一定額を控除される「住宅ローン控除」が適用されます。
この控除額は、一般的な家の場合は最大400万円ですが、長期優良住宅だと最大500万円まで控除できます。控除額が多ければ、それだけ所得税や住民税が節税できるのです。
なお控除額は、住宅ローンの借入額や、所得税・住民税の額などによって異なり、すべての方が500万円控除されるわけではありません。
長期優良住宅のメリット2:不動産取得税の控除額
土地を購入したり建物を建てたりした際には、「不動産取得税」がかかります。
不動産取得税は、「課税標準から一定の控除額を差し引いた額の3%」で求めますが、この一定の控除額も長期優良住宅だと優遇されます。
一般的な家の控除額は1,200万円に対し、長期優良住宅だと最大1,300万円ですので、不動産取得税の節税も可能です。
長期優良住宅のメリット3:登録免許税の優遇
家を建てるときにかかる諸経費の一つに、「登録免許税」があります。
登録免許税とは、法務局に土地や建物の所有権保存登記をする際にかかるもので、一般的な家だと不動産価格の0.15%が税金としてかかります。
これが長期優良住宅だと、0.1%に優遇されます。
長期優良住宅のメリット4:固定資産税の減額優遇期間が長くなる
不動産を所有し続ける限り、毎年かかるのが「固定資産税」です。
固定資産税は、戸建住宅を建ててから3年間は2分の1になる減額措置がありますが、長期優良住宅だと5年間に延ばせます。
長期優良住宅認定の手続き方法や必要な費用は?
長期優良住宅の認定を受けるには、着工前に申請を行う必要があります。
まず、住宅性能評価・表示協会から「登録住宅性能評価機関」として登録された企業に事前審査(技術的審査)を実施してもらいます。
審査項目は、「長期優良住宅とは、どんな家?」で紹介した基準をクリアしているかを、住宅性能の事細かな部分までチェックされます。
この審査をクリアすれば、登録住宅性能評価機関が「適合証」を発行しますので、これを持って所管行政庁へ申請します。
所管行政庁でも同じく審査され、認定されたら長期優良住宅の証となる「認定通知書」が渡されます。
なお、申請するには費用がかかります。登録住宅性能評価機関による事前審査に5~6万円、さらに所管行政庁での申請に数千円から数万円(所管行政庁によって異なります)くらいの手数料が必要です。
・長期優良住宅の注意点・デメリット
さまざまなメリットのある長期優良住宅ですが、デメリットとなる注意点もありますので、あらかじめ承知しておく必要があります。
注意点の一つは、建築コストが高くなること。
長期優良住宅は、耐久性に優れた構造や設備を用いることから建材や設計技術などにかかるコストが長期優良住宅ではない住宅と比較すると高くなります。
また、工事期間も一般の住宅と比べて数週間から1ヵ月くらい長くなる傾向にあるため、その分のコストが増加します。
建物に求める仕様などによって異なりますが、一般住宅と比べると2~3割は多くなるのが通例です。
また、建物に住み始めてからの手間やコストがかかるのも注意点です。
認定を受けた後も定期的に点検を行い、必要に応じて修繕工事などを実施します。
このときの点検・工事の内容は記録書を作成して、保存することが求められます。
通常の住宅と比較すると手間とコストがかかる点が、長期優良住宅のデメリットとなります。
まとめ
日本の家は、諸外国と比べて寿命が短く30年くらいが一般的でした。
雨が多く、寒暖の差が大きいといった日本の厳しい気候も、家の寿命を短くする要因の一つです。
このため中古物件の価値は早々になくなり、スクラップ&ビルドの繰り返しで「従来の日本の家は合理的とはいえない」のが実情だったのです。
一方、欧米では100年以上建ち続ける一般住宅はたくさんあり、転売を繰り返されながら何代も住み続けるというのが通常。古い家ほど、生活感や味わいがあって人気があるようです。
資産価値を100年前後も保ち続けられる家が、長期優良住宅なら実現できます。子や孫の世代に残せる立派な家を建てたいと思っている方は、長期優良住宅をぜひご検討ください。
コラム監修者情報
木場昌也
二級建築士/ 1級施工管理技士
【現場管理】注文住宅・店舗 110棟
【販売】注文住宅 79棟
入社歴23年。8年現場監督経験を経て営業職に。
震災後は県内の品質管理、着工数の平準化を図るため工事管理職に従事。また注文住宅の安定供給、品質賞の受賞に携わる。
その後、ZEH普及、高気密・高断熱商品の開発、販売、店長職を兼任。