30代後半から40代で家を購入するメリットとデメリット
特に30代後半から40代にかけての年代は、住宅購入を検討される方が多いタイミングです。20代から30代前半にかけての若いうちに家を買うという選択肢もありますが、実際に家を購入するタイミングとして、どちらが正しいのでしょうか?
自分に合った購入のタイミングを判断するために、30代後半から40代にかけてのタイミングで住宅を購入するメリットとデメリットを考えていきましょう。
30代後半や40代は家の購入機会が多い!理由も解説
30代後半から40代にかけて家を購入する人が多い理由には、それぞれのライフプランのターニングポイント(ライフイベント)が関係しています。
子どもの人数が確定するため
子どもの人数は間取りに直結するため、人数が確定したタイミングで住宅購入を検討する人が少なくありません。30代後半から40代になるころには、子どもの人数がある程度確定してきます。
結婚したばかりの頃は子どもが生まれるかどうかまだわかりませんし、子どもの人数が予定より増えたり減ったりすることもよくあります。その段階で住宅を購入すると、子ども部屋が余ったり足らなくなったりしてしまうかもしれません。大きな部屋を後で仕切れるような可変性の高い間取りもありますが、家族構成がわかっていれば最初から家族に合った住まいが選べます。
子どもの人数が増えると新婚時代に借りた賃貸住宅は手狭になりますし、子どもが成長してくると「庭でバーベキューがしたい」「一人部屋が欲しい」などの希望も増えてきます。そのタイミングで「そろそろ購入しようかな」「家族がのんびり暮らせる家で過ごしたい」と思う人も多いようです。
子どもが小学校に入学するため
小学校に入学すると子どもなりに人間関係を構築していくので、転校して子どもに負担をかけることを考えると、「在学中にあまり引っ越しはしたくない」という人が多いようです。そのため、子どもの小学校入学前のタイミングで住宅購入を考える人が多くなります。
入学後に学区内で物件を探そうと思うと選択肢が狭まるため、なかなか条件に合う物件が見つかりません。土地を探して打ち合わせを重ね、家を建てるとなるとある程度の期間が必要となるので、小学校入学前に入居したいなら逆算して早めに土地やハウスメーカーを探し始めておくことが大切です。
頭金が貯まるため
住宅ローンの借入額を抑えたい人は、頭金を多目に入れて家を購入します。そのため20代などの若い世代のうちは貯蓄に努め、30代後半から40代にかけて目標資金が貯まってきたタイミングで購入を検討する人もいます。
公立にしても私立にしても、子どもが高校に進学するころから教育費が増えてくるので、小学校から中学校にかけての期間が資金の貯め時です。頭金が多めにあれば借入可能額も増えるため、手の届く物件の範囲もより広がってくるでしょう。
今後の年収が読みやすくなるため
今の時代、転勤はまったく珍しいことではありません。しかし一般的に転職が多い年代は30代前半までで、30代後半から40代にかけて、多くの人は仕事やその後の年収の推移がある程度、確定してきます。
昇給の内容などは経済状況によっても変わってきますが、ある程度の予測に基づいて返済計画を立てれば、安心して住宅ローンの返済を進められます。
30代後半や40代で家を購入するメリットは?
30代後半から40代になるまで待って家を購入すると、次のようなメリットが考えられます。
メリット1 頭金が貯まる
子どもが小さいときにお金を貯めておけば、その年代になる頃にはある程度、まとまった資金が手元に貯まっています。それを頭金として活用すれば、住宅ローンの借入総額が抑えられたり、少し豪華な住宅に手が届いたりします。
この年代になると年収もある程度、上がっていることが多いので、若い頃に購入する場合に比べると家計に余裕をもって返済できるケースも多いです。
メリット2 返済期間を短くできる
頭金をしっかりと用意すれば借入総額が抑えられ、さらに若い世代に比べると年収も増えているので、返済期間が短く設定できます。借入期間が長くなるほど利息負担が大きくなるため、返済期間の短縮は総返済額の圧縮につながります。
メリット3 家族構成に沿って計画できる
住宅の間取りは、家族構成によっても大きく変わってきます。30代後半から40代にかけては子どもの人数が確定し、家族構成が固まっていることが多いので、家族に合った間取りが選べます。
さらに家族構成が固まっていると、「入学」「受験」「卒業」「就職」などのライフプランも見えてくるので、返済計画が立てやすいという点もメリットです。
30代後半や40代で家を購入するデメリットは?
ご紹介したように、若いころに家を買うことに比べて30代後半から40代にかけて住宅を購入することにはたくさんのメリットがあります。しかし、次のようなデメリットもあるので注意が必要です。
デメリット1 返済期間が長くとりにくい
30代後半から40代になるまで待って家を購入する際、一番大きな問題となるのが返済期間です。収入が確保しやすい定年退職までの期間を設定すると、返済期間が短くなるので注意が必要です。
多くの金融機関では、住宅ローンの借入期間を最長35年間で契約者の年齢が80歳までとしています。しかし、実際にその年齢では働いている人が少なく(一般的な企業の定年退職年齢は65歳から70歳程度)、主な収入が年金となる可能性が高いため、あまり多額の返済は現実的といえません。
返済期間を短縮するため退職金で繰り上げ返済し、老後資金に影響が出るというケースもよくあります。20代後半から30代前半にかけて購入すれば、返済期間を最長の35年間に設定しても、70歳になる前には完済できるのであまり無理がありません。
デメリット2 家賃負担の累計額が大きくなる
多くの場合は、住宅を購入するまでの期間、賃貸物件に住むためその期間の家賃負担が発生します。住宅ローンの返済を続ければいずれ完済し、物件が自分のものになりますが、家賃の支払いはいくら続けても、資産として何も残りません。
特に現在は、全期間固定金利でも1.2%程度で借りられる金融機関もあるなど、超低金利が継続しています(2021年5月現在)。頭金を多めに出して借り入れ総額を抑えるよりも、早めに購入した方が、生涯にかかる住居費の節約につながるかもしれません。
デメリット3 毎月の返済額が大きくなりがち
定年退職前に完済できる期間で住宅ローンを組むと、短い返済期間となるため毎月の返済額が大きくなり、生活に影響が出るケースもあります。
この年代になると年収が増え、借入可能額も高くなりがちですが、目一杯まで借りると返済額がさらに膨らんでしまいます。特に、この世代になるまでに頭金が貯められなかった人は、かなり返済が厳しくなると考えましょう。
この年代は子どもが成長して教育費が膨らんでくる年代でもあります。返済額が膨らんだからといって住宅ローンの返済にばかり気を取られていると、教育費や老後資金の準備に影響が出るかもしれません。
借入可能額よりもライフプランや返済計画を優先し、予算を守って購入する家を決めることが大切です。
30代後半で家を購入する際には入念な計画を
30代後半から40代にかけて家を購入する場合、20代などの若い世代で住宅購入する場合よりもさらに返済計画をきっちりと立てる必要があります。特に次のような点に注意して返済計画を立てましょう。
まずはファイナンシャルプランを組もう
ファイナンシャルプランとは、家族の年齢や学校、会社などのライフステージに合わせて、収入や支出の推移、預貯金などの資産を盛り込んだ、資金面における人生の計画表です。結婚や出産、入学、卒業、就職、定年退職といったライフイベントや大きな旅行の計画、それにまつわる出費などもできる限り詳細に盛り込みます。
ファイナンシャルプランを立ててもらうには、主に次の2つの方法があります。
- 独立したファイナンシャルプランナーの事務所で相談する
- 保険会社や住宅会社などで相談し、ファイナンシャルプランナーの資格を持った担当者に立ててもらう
独立した事務所で相談すると、プランニング自体にお金がかかることもありますが、中立の立場で相談に乗ってもらえます。一方保険会社や住宅会社の担当者にファイナンシャルプランを立ててもらえば、基本的にお金はかかりません。ハウスメーカーが決まっている場合は、一度そこで相談してみると良いでしょう。
正確なプランを立てるためには、情報を包み隠さず伝えることが大切です。年収や預貯金などの資産状況、毎月の支出などの情報を、できる限り詳しく伝えましょう。住宅ローンの返済計画を立てる場合、このファイナンシャルプランとの関係が非常に重要となります。
特に30代後半以降では、子どもの進学などでまとまったお金がかかります。それらのタイミングで家計に無理が出て返済が滞ることのないよう、あらかじめ貯金しておくなどの対策が必要です。資産の推移が見えるとモチベーションも上がるので、ぜひファイナンシャルプランを立てましょう。
完済年齢は定年退職までに設定
返済期間は基本的に、定年退職までとしましょう。毎月の返済額を少なく抑えるために返済期間は長く設定してしまいがちですが、年金生活になると住宅ローンの返済が終わっていても生活費に余裕がなくなる人が多く、返済を続けながら生活するのは現実的ではありません。
退職金による繰り上げ返済は可能ですが、退職金を当てにしてしまうと老後の資金計画に影響が出ます。
30代後半以降で住宅を購入する場合、繰り上げ返済をすることを前提に長めに住宅ローンの返済期間を設定する人も多くいます。しかし、「思ったよりお金が貯まらなくて繰り上げ返済できなかった」という人が少なくありません。
そうした事態にならないよう、お金を貯めておくことが大切です。先取り貯金などの頑張らなくても続けられる貯金の仕組みで、計画通り貯蓄や返済を進めていきましょう。
予算を守って
30代後半以降は年収も上がっていて、頭金もある程度、貯まっているため、借入可能額が多くなります。また年齢が進むと周囲にも住宅を購入している人が多くなり、目が肥えているため、つい間取りを広くしたり仕様を豪華にしたりしたくなるかもしれません。
しかし、住宅購入の予算は、あくまでもライフプランに沿って考えることが大切です。借入可能額一杯まで借りると、返済が厳しくなる可能性が高いので注意してください。
設計プランを考えてもらう前に予算を立てておくと、つい予算をオーバーしてしまう可能性が抑えられます。ファイナンシャルプランを立て、それに基づいた予算を立てておけば、自分自身がその予算の根拠に納得しやすいので無理な予算オーバーの予防になります。
家づくりでは大きなお金が動くのでつい「10万円くらいならいいか」などと金銭感覚がマヒしてしまいがちですが、普段の生活では1万円、2万円というお金もそれなりに存在感がある金額なのではないでしょうか。
一生に一度の大きな買い物とはいえ、代金を支払うのは自分自身です。本当にそれが必要なのかどうか厳しく判断してください。
まとめ
30代後半から40代にかけて家を購入する場合のメリットとデメリットについてご紹介しました。この年代は頭金が貯まっていたり年収が増えていたりして、借入可能額が増え、物件の選択肢も広がります。
しかし、定年退職までの期間や老後資金・教育資金の準備などを考えると、返済期間を長く取りにくいので、安易に購入する物件のグレードをアップしたりオプションを付けたりして予算をオーバーする事態は避けなければなりません。
人生の三大支出のうち、どれか一つに偏って予算を編成すると、ほかの2つに無理が出ます。老後費用や教育費は、対象の年齢になれば待ったなしでかかるようになるので、事前の準備が大切です。
30代後半以降に住宅を購入する場合、ライフプランと返済計画との兼ね合いが一層シビアになります。「まあいいや」「何とかなる」ではどうにもならないことがあるので、安心して返済が続けられるようきちんとした計画を立てましょう。
コラム監修者情報
木場昌也
二級建築士/ 1級施工管理技士
【現場管理】注文住宅・店舗 110棟
【販売】注文住宅 79棟
入社歴23年。8年現場監督経験を経て営業職に。
震災後は県内の品質管理、着工数の平準化を図るため工事管理職に従事。また注文住宅の安定供給、品質賞の受賞に携わる。
その後、ZEH普及、高気密・高断熱商品の開発、販売、店長職を兼任。