家を買うなら知っておこう!建ぺい率と容積率
マイホームのための土地探しをしていると、広告などで「建ぺい率」「容積率」という言葉を目にすると思います。
これから建てる家の広さや高さに関係する数字だと、なんとなくは知っていても、詳しくは設計士さんや工務店に任せればいいや、とよく調べないままの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
建ぺい率や容積率は街づくり計画に深く関わるルールであり、その数字からどのような環境の土地であるか想像することもできるのです。
建ぺい率と容積率ってなんのこと?
「建ぺい率」「容積率」とは、「その土地にどれぐらいの広さ・大きさの建物を建てられるか」を測る指標の一つです。
どちらも、敷地に対する建物の広さの比率を分数やパーセントで表現します。
建築基準法に定められた「建ぺい率の上限」や「容積率の上限」を超える大きさの建物は、新しく建てることはできません。
土地の広告に「建ぺい率」「容積率」と記載されている数字は、法で定められたこの「建ぺい率の上限」「容積率の上限」を意味しています。
建ぺい率は、敷地のうち建物がどれぐらいの広さを占めているかを表します。
敷地面積が100m2、建ぺい率60%の場合、敷地のうち60m2の部分に建物が建ち、残り40m2は庭や通路です。
一方の容積率は、敷地面積に対して建物の床面積の合計がどれくらいあるかを計算します。
100m2の敷地に、1階が80m2、2階が50m2の2階建ての家を建てる例を挙げましょう。
床面積の合計は130m2なので、容積率は130%という結果となります。
このように、容積率は建物の高さ(階数)と大きく関係します。
なぜこのような制限があるのかについては、防災と住環境保護の二つの視点があります。
土地に対して隙間なく建物が密集すると、火事が起きた際にあっという間に近隣へ燃え広がる危険性があります。
地震で建物が倒壊した場合も、敷地内に避難できる空間があるかどうかが生命の危険を左右します。
また背の高い建物が密集することで、日当たりや風通しなどの健康で快適な生活を送るための環境が失われてしまいます。
高層マンションのような建物が乱立すると人口が増え、上下水道や電気の供給も不安定になります。
建ぺい率・容積率の制限は、住む人が安心して快適に暮らせる街づくりのために欠かせない規制です。
しかし、建ぺい率・容積率を知らずに土地を購入すると、思い描いていた大きさの家を建てられないことにもなりかねません。
用途地域で建ぺい率と容積率は決まっている
用途地域と建ぺい率・容積率の関係
建ぺい率・容積率の制限は、用途地域に応じて定められています。
用途地域とは土地の使い方を定める制度の一つで、都市計画法に基づき制定されています。
建物を建てられる土地を用途別に13種類に分け、街づくりの目的に適した開発が行われるよう細かい規制が定められています。
建ぺい率の制限、容積率の制限もそういった規制の一つです。
用途地域は大きく「住居系」「商業系」「工業系」に分けられますが、「住居系」地域では建ぺい率・容積率が厳しく制限され、「商業系」「工業系」は制限がゆるやかな傾向があります
用途地域と建ぺい率・容積率の一覧
建ぺい率・容積率の上限は次の数字から指定されます。
特定の住所の建ぺい率・容積率を知りたい時は、各自治体の都市計画課への問い合わせやインターネット上に公開されている地図で調べられます。
建ぺい率(%) | 容積率(%) | ||
住居系 | 第一種低層住居専用地域 | 30・40・50・60 | 50・60・80・100・150・200 |
第二種低層住居専用地域 | 30・40・50・60 | 50・60・80・100・150・200 | |
第一種中高層住居専用地域 | 30・40・50・60 | 100・150・200・300 | |
第二種中高層住居専用地域 | 30・40・50・60 | 100・150・200・300 | |
第一種住居地域 | 60 | 200・300・400 | |
第二種住居地域 | 60 | 200・300・400 | |
田園住居地域 | 30・40・50・60 | 50・60・80・100・150・200 | |
準住居地域 | 60 | 200・300・400 | |
商業系 | 近隣商業地域 | 80 | 200・300・400 |
商業地域 | 80 | 200・300・400・500・600・700・800・900・1000 | |
工業系 | 準工業地域 | 60 | 200・300・400 |
工業地域 | 60 | 200・300・400 | |
工業専用地域 | 30・40・50・60 | 200・300・400 |
建ぺい率・容積率の計算方法
建ぺい率の計算方法
建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積の比率です。
建築面積とは建物を真上から見たときの面積を指し、水平投影面積ともよばれます。
基本的に壁で囲まれた部分が算入され、庇やバルコニー部分は建築面積に計算されません。
同じ敷地内に2つ以上の建築がある場合は、その建築面積の合計で計算します。
建物の建築面積を敷地面積で割ると、建ぺい率が求められます。
建ぺい率=建築面積÷敷地面積
容積率の計算方法
容積率は、敷地面積に対する延べ床面積の比率です。
延べ床面積とは、建物の全ての床面積の合計を指します。
建築面積と同じように、基本的に壁で囲まれた面積が計算されます。
建物の延べ床面積を敷地面積で割ると、容積率が求められます。
容積率=延べ床面積÷敷地面積
建ぺい率・容積率に関する注意点
特定の敷地の建ぺい率・容積率の上限を求める際は、用途地域に応じて定められた数字に加え、敷地の特徴に合わせた計算を行う必要があります。
建ぺい率の上限を求める際の注意点
- ①敷地が建ぺい率の異なる2つ以上の地域にまたがる場合
この場合、それぞれの地域に属している部分ごとにの建ぺい率の上限を計算して建築可能面積を求め、最後に合計します。
例:敷地面積150m2(うち100m2が建ぺい率60%、50m2が建ぺい率80%)の場合
100m2×0.6+50m2×0.8=100m2
したがって、この敷地には建築面積100m2の家が建てられます。
- ②建ぺい率が緩和される場合
建ぺい率には緩和措置があり、定められた建ぺい率に10%を加えることができます。
・商業系の用途地域以外で、防火地域内に耐火建築物を建てる場合
・特定行政庁が指定する角地など
ちなみに敷地が防火地域内外にまたがる場合、敷地内の建物がすべて耐火建築物であれば、その敷地はすべて防火地域内にあるものと見なされます。
容積率の上限を求める際の注意点
- ①敷地の前面道路の幅が12m未満の場合
敷地の前面道路が12m未満のとき、前面道路の道路幅に40%または60%を掛けて容積率の上限を求める場合があります。
前面道路の幅に40%または60%を掛けて求めた容積率が、用途地域に応じて定められた容積率と異なる場合は、より小さい方がその敷地の容積率の上限となります。
- ②敷地が容積率の異なる2以上の地域にまたがる場合
この場合、建ぺい率と同じようにそれぞれの地域に属している部分ごとに容積率の上限を計算し、最後に合計します。
例:敷地面積が150m2(うち100m2が容積率80%、50m2が容積率200%)の場合、
100m2×0.8+50m2×2=180m2
したがって、この敷地には延べ床面積180m2の家が建てられます。
- ③容積率が緩和される場合
幅員15m以上の特定道路に接続する道路(幅員6m以上12m未満)に接する敷地の場合、特定道路から70m以内の部分については容積率の緩和措置があります。
建ぺい率と容積率以外にも存在する建築制限
土地に建てられる建物の高さや大きさに対して、建ぺい率や容積率のほかにもさまざまな制限があります。
斜線制限
斜線制限は高さを規制する制限で、道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限の3種類があります。
直方体の一部を斜めにカットしたような形のビル・マンションを見かけたら、それは斜線制限の影響です。
道路斜線制限は、土地全面道路の日当たりや風通しなどを確保するための制限です。
基本的にどの用途地域でも適用されます。
隣地斜線制限は、隣接する土地の日当たりや風通しなどを確保するための制限です。
第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域以外の住居地域では、高さ20mを超える建物に隣地斜線制限がかかります。
北側斜線制限は、北側に隣接する土地の採光を確保するための制限です。
自分の家の日当たりの事だけ考えて敷地の北側ギリギリに建物を建て、北側の土地に大きな日影を作ることを避ける意味があります。
日影規制
日影規制は、建物によって近隣の敷地に日影を作る時間を一定制限内に抑えるための制限です。
日影が作られる時間は、一年のうちで最も太陽が低い冬至の日を基準に定められています。
絶対高さ制限
第一種・第二種低層住居専用地域では、容積率に関わらず建物の高さが10mまたは12mに制限されています。
高度地区の制限
高度地区は都市計画法で定める「地域地区」の1つで、用途に応じて建物の高さを制限しています。
各自治体が独自に定める制度なので、高度地区の規制内容は自治体によって異なります。
建ぺい率・容積率を守って広い家を建てるには?
建ぺい率・容積率を守りながら広々とした家を建てるには、建ぺい率・容積率に計算される面積がどの部分かを良く知っておく必要があります。
まず、建ぺい率を計算するための建築面積に、軒や庇、はね出しのバルコニーなどは算入されません。
しかし、同じバルコニーでも、柱や壁に囲まれている部分や1m以上奥まっている部分については建築面積に算入され、建ぺい率を圧迫します。
容積率を節約したい場合は、地下室やロフトを上手に活用する方法があります。
住居用の建物なら、天井が地盤面から1m以下にある地下室の1/3の面積までは延べ床面積に算入されません。
また、天井高1.4m以下の屋根裏部屋やロフトも、直下階の床面積の1/2までは延べ床面積から除外されます。
どちらも居室として快適な環境とはいえませんが、地下室ならシアタールームやホームジム、ロフトは収納として活用するなど、使い方はアイデア次第です。
まとめ
建ぺい率・容積率の制限について知ると、その土地の周辺にどのような建物が建っているか、日当たりや風通しは良いか、などが見えてきます。
また、建ぺい率・容積率の計算方法を知ることで、より理想的な広さの家を建てることができるでしょう。
土地探しの際はぜひ建ぺい率・容積率をチェックして、家づくりのヒントとして生かしてみませんか。
コラム監修者情報
木場昌也
二級建築士/ 1級施工管理技士
【現場管理】注文住宅・店舗 110棟
【販売】注文住宅 79棟
入社歴23年。8年現場監督経験を経て営業職に。
震災後は県内の品質管理、着工数の平準化を図るため工事管理職に従事。また注文住宅の安定供給、品質賞の受賞に携わる。
その後、ZEH普及、高気密・高断熱商品の開発、販売、店長職を兼任。