新築住宅の保証ってなに?保証の種類や期間
新築住宅は工務店やハウスメーカーなどの建築会社に依頼して作るのが一般的ですが、入居してから欠陥住宅だったことが発覚する場合もあります。
その場合、何も保証されなければ泣き寝入りを強いられてしまうかもしれません。
しかし、国ではオーナーの方を守れるよう、瑕疵に対しての保証が法律で定められています。
今回は、新築住宅の保証にはどのようなものがあるのかをご紹介します。
保証の種類や期間について詳しく解説するため、これから新築住宅を建てようと思っている方は参考にしてみてください。
数年~数十年と長く住む家だからこそ、瑕疵があっては理想の生活を送ることなどできません。
そのため、万が一の事態に備えるためにもぜひ新築住宅の保証について知っておきましょう。
新築住宅に対する保証の種類
新築住宅に対しては、国が定める保証を適用可能です。
その新築住宅に関する保証の種類は大きく分けて2つに分類されています。
種類によって保証の内容が異なるため、正しく理解しておく必要があります。
まず1つ目の保証が、建物の雨漏り部分や基本構造部分に対する保証です。
建物というのは基礎があり、その上に外装などの壁や床があり、さらには屋根や天井があります。
これらの雨漏り部分や基本構造部分に瑕疵があると、トラブルが発生してしまうわけです。
新築住宅でそのような事態となれば大問題です。
事実、オーナーの方が自分で気づける瑕疵の多くは、雨漏り部分や基本構造部分の目に見える瑕疵が一般的となります。
2つ目の保証が、キッチンやトイレなどの設備やサッシやクロスなどの機材など内装に対する保証です。
生活する上で必要な設備や機材に不備があれば、快適な生活など送れません。
なかには新品の建具を使っているはずなのに、不具合が頻発するような新築住宅もあります。
その場合は完全に欠陥住宅だといえるでしょう。
原則として新築住宅の保証にはこの2つの種類があるため、内容については事前に把握しておきましょう。
なお、保証には法律で定められている場合と建築会社が独自に決めている場合の2つがあります。
法律においては瑕疵担保責任によって一律に保証の内容が定められている一方、建築会社ごとの保証では内容も異なるため、事前に確認が必須です。
瑕疵担保責任とは?
瑕疵担保責任とは、簡単に言えば不動産の売買契約や請負契約において、引き渡された物件の品質が契約の内容と一致していない場合に売主が買主に対して負う責任のことです。
要は欠陥住宅だった場合に発生する責任のことです。
たとえば、新築住宅ではすべて新品で作るにも関わらず、入居後に不具合が発生する場合もあるかもしれません。それは完全に建築会社の責任となります。
その責任を負うことを明確化したのが瑕疵担保責任です。
これは2000年4月に施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律、品確法によって定められているもので、すべての建築会社は不動産や物件の売買において瑕疵担保責任を負うことが義務づけられています。
瑕疵とは当初の契約で取り決めた内容と引き渡し後の内容が乖離していることを意味し、新築住宅にも関わらず本来の性能や品質に至っていない欠陥住宅ことを指しています。
ただ、売主と買主によって瑕疵の解釈が異なる点には注意が必要です。
状況によっては、売主は瑕疵と判断せず、買主だけが瑕疵と判断する場合もあります。
瑕疵担保責任は定義するのが難しい取り決めであり、その判断も曖昧です。
その一方で、中には事故や怪我などが発生した住宅を調査することで、後々に瑕疵があったと判断されることもあります。
この場合は心理的瑕疵などと呼ばれ、通常の瑕疵担保責任を後追いというかたちで追及できます。
たとえば、新築住宅は原則として建築基準法で定められた耐震性能を確保しなくてはならないのですが、完成した物件の耐震性能が基準を満たしていないこともあるかもしれません。
一目で判断することはできませんが、実際に地震が発生した後に瑕疵だったことが判明する場合もあるわけです。
その場合、売主は補修などを行うことで基準を満たすよう耐震性能を確保する義務が発生します。
その際、買主は補修してもらう代わりに損害賠償を請求することができます。
このように瑕疵担保責任は、売主から買主を守るための義務となっているのです。
また、民法第635条によると新築住宅に瑕疵があった場合、買主が注文した内容を満たしていない場合に限り契約を解除できるとも取り決められています。
売主による補修が実施されてもなお損害がある場合は、補修と併せて損害賠償を請求することも可能です。ちなみに、2017年5月に改正民法が成立したことで民放第635条は削除されました。
しかし、その後の改正民法は2020年に施行される取り決めがなされ、今後は状況次第では契約を解除することも可能となりました。
これら瑕疵担保責任は法律によって条件が変わる場合もあるため、直近の情報を調べておくことも重要です。
建物の基本構造部分についての保証はいつまで?
建築会社には瑕疵担保責任があることは理解していただけたと思いますが、建物の雨漏り部分や基本構造部分についての保証はいつまでなのでしょうか。
結論から先にいうと、新築住宅の保証は引き渡しから10年間と定められています。
これは品確法第95条に明記されているため、入居してから10年間の間に不具合が生じた場合、買主は売主に対して保証を求めることが可能です。
確実に10年間は保証されるため、その間に雨漏り部分や基礎構造部分に問題が発生した場合は、売主が無償で補修を行わなくてはなりません。
これは買主にとって安全に新築住宅を手に入れるための法律だと理解しておきましょう。
ただ、保証はあくまでも雨漏り部分と基本構造部分に限定されているため、「いつまで」よりも「どこまで」保証してくれるのかを考えておく必要があります。
実際に雨漏り部分や基本構造部分などが原因ではない問題に対しては保証を求めることができません。
10年間という長い年月の間に内装や外装、その他の設備や機材は経年劣化していきます
。これは瑕疵担保責任の対象ではないため、何でも補修してくれると勘違いしてしまう方も事実として多いです。
その一方、宅地建物取引業法第40条では、住宅の引き渡しから2年間は建築会社が瑕疵担保責任を負わなければならないと定めています。
これは品確法第95条と併用できるため、新築住宅の引き渡しから2年間は住宅全体の問題について保証してもらえ、それに加えて10年間は雨漏り部分と基本構造部分について保証してもらえます。
そのため、問題が発生した場合は躊躇することなく保証を求めてください。
住宅瑕疵担保履行法とは
住宅瑕疵担保履行法とは、前述の通り新築住宅などに瑕疵が見つかった場合、その責任を買主が売主に追及できる法律です。
特に2000年から品確法が施行されたことで、建物の雨漏り部分と基本構造部分に関しては10年間の瑕疵担保責任が義務付けられました。それにより状況も一変しました。
従来は1年間という短い期間だけの保証だったのですが、それでは多くの方が瑕疵を判断できないということもあり、現行の法律へと変わった次第です。
その後、2005年に耐震偽装問題が大きく取り沙汰されたことで、さらに状況は変わりました。
この耐震偽装問題の際は建替えが必要と判断されたものの、分譲した建築会社が債務超過に陥り倒産してしまったために多くのオーナーの方が建替え費用を負担しなくてはならなくなりました。
その結果、多くの方が困窮した事態になってしまったのです。この問題もあり売主から買主を守るという意味で、2009年に住宅瑕疵担保履行法が施行されたわけです。
事実、この法律施行後は建築会社が瑕疵担保責任を果たすよう義務付けられたことで、よりオーナーの方の生活が守られるようになりました。
それに伴い住宅瑕疵担保責任保険なども登場したことで、加入していた場合は保証金を受け取ることも可能です。これらの法律があることで、より安心して新築住宅を建てられるようになりました。
建築会社によって保証内容は違う
新築住宅の保証は法律で決められているのですが、それとは別途で建築会社によって保証内容が異なる場合もあります。
法律においては雨漏り部分や基本構造部分において瑕疵担保責任期間が10年とされていますが、工務店やハウスメーカーなどの建築会社によっては、法律とは別途で定めていることが多いです。
たとえば、工務店やハウスメーカーなどの建築会社の多くは、10年という保証の期間を超える長い期間を定めています。
保証の期間が長くなることで、その建築会社に対して良い印象を持ちやすくなるはずです。建築会社の多くはそれをアピールすることで、より多くの契約を生もうとしているわけです。
瑕疵担保責任はあくまでも欠陥住宅であった場合の保証となるため、契約通りに作ればまったく問題はありません。
しかし、その一方で「保証の期間が長い=良い建築会社」だと考えてしまう人もいるため、冷静に判断する必要があります。あくまでも契約通りに作るのが普通なので、そこは勘違いしないよう判断してください。
肝心の保証の期間ですが、建築会社によっては雨漏り部分や基本構造部分などに対する保証期間は20年だったり40年だったりします。事前によく確認しましょう。
ただし、建具などはほかの雨漏り部分や基本構造部分とは異なり、保証も短い傾向にあります。
それこそ状況によっては1~2年ほどしか保証していないようなところもあるため、事前によく検討してください。
その他、各種設備や機材はそれぞれの製造元や提供元によって保証期間も異なるので、こちらも併せて確認が必須です。
ちなみに、保証があればそれだけで安心ですが、建築会社によっては有料のメンテナンスを実施することを条件に保証するという場合もあるため注意が必要です。
建築会社によってはそのメンテナンスで利益を上げようとしているところもあるため、専門性や網羅性だけではなく信頼性の高い建築会社を選ぶことも重要となります。
まとめ
新築住宅を建てる際、雨漏り部分や基本構造部分に関しては10年の瑕疵担保責任が義務付けられています。
これは売主が欠陥住宅を買主に提供した場合、その責任を追及できる取り決めです。
しかし、実際にはそれと別途で保証を用意している建築会社もあるため、本当にオーナーの方を思って保証を用意しているところを選ぶ必要があります。
夢のマイホームが欠陥住宅だった場合は笑い事ではないため、必ず信用できる建築会社に相談しましょう。
できれば複数の工務店やハウスメーカーを比較して選ぶようにしてください。
コラム監修者情報
木場昌也
二級建築士/ 1級施工管理技士
【現場管理】注文住宅・店舗 110棟
【販売】注文住宅 79棟
入社歴23年。8年現場監督経験を経て営業職に。
震災後は県内の品質管理、着工数の平準化を図るため工事管理職に従事。また注文住宅の安定供給、品質賞の受賞に携わる。
その後、ZEH普及、高気密・高断熱商品の開発、販売、店長職を兼任。