注文住宅用の土地はどう探す?探し方・注意すべき点や流れ
注文住宅を建てる場合、家より先に土地を見つける必要があります。
ただ、不動産の売買手続きは手順も多く、土地ごとの比較も難しいため、片手間にできるものではありません。
手続きの複雑さや専門用語の多さから、「こんなに面倒なら建売住宅を買ってしまおう」と諦めてしまう人もいます。あらかじめ、注文住宅用の土地を探す方法や、土地探しにおける注意点を知っておくと良いでしょう。
今回は、気になる土地を購入するかどうか検討する際に役立つ、土地選びのチェックポイントをご紹介します。
土地の探し方にはいくつかの方法がある
不動産仲介会社の情報網や不動産情報サイトを使う
注文住宅用地の探し方として、もっとも一般的なのは不動産会社の利用です。
不動産会社の店頭であれば、地域別・面積別などで気になる土地情報をチェックできるほか、「予算○万円以内で手に入るおすすめの土地は?」といったあいまいな情報でも、土地情報を教えてもらえます。
また、注文住宅の工務店やハウスメーカーなら、まだ市場に出していない自社の土地を紹介してもらえる場合があるのもポイントです。
「希望の新居」に合わせた土地選びのアドバイスを受けたい場合は、不動産会社に相談しましょう。
ただし、不動産会社を利用した土地探しは、「不動産会社の営業時間中」に店頭へ足を運ぶ必要があります。また、対面での相談となるため、ほぼ確実に営業マンから営業をかけられてしまうのも問題です。
・仕事が忙しく、残業を終えると不動産会社の営業時間が終わっている
・幼い子どもがいるためできるだけ外出を避けたい
・営業マンと会話せずに自分のペースで土地を探したい
といった場合は、店頭へ足を運ぶ前に不動産情報サイトを利用すると良いでしょう。
そんなインターネットを使った土地探しのメリットは、24時間いつでも無料で気になる土地を探せることです。新しく売り出されることになったばかりの土地や、最寄り駅まで徒歩15分以内の土地など、細かい条件を設定しておすすめの土地を絞り込むこともできます。
店頭での土地探しに比べて、短時間で大量の土地を探して比較できるので、土地価格の平均を出せば気になるエリアの土地相場も把握できるでしょう。
もちろん、不動産は高価な資産なので、ネットショッピングのようにネット上で決済まで進めることはできません。実際には、ネット上で気になる土地を見つけた後、土地を扱っている不動産会社に訪問の予約を入れて、対面で売買契約を結ぶことになります。
ただ、ネットを通じてあらかじめ土地の相場を知っておけば、相場より安すぎるなど、問題を抱えている可能性の高い土地を避けることが可能です。
ネットに土地情報を出している不動産会社の中には、客寄せ目的で売る気のない「おとり広告」を使っている悪徳企業も存在します。相場を知っていれば、仮に「その土地は売れてしまいました。代わりにこちらの土地を」といった営業をかけられても、高いか安いかを判断して拒否できるでしょう。
悪徳企業にだまされるリスクを下げるためにも、自力で何とかしようとするのではなく、「ネット→不動産会社の店頭」という流れで土地探しを進めるのがおすすめです。
知り合いや親族からの紹介で探す
もし、友人知人や親族に地主がいれば、知り合い経由で土地を売ってもらうという手もあります。
お互い見知った仲なら安心して取引できますし、場合によっては土地の買取価格も優遇してもらえるでしょう。
ただし、たまたま土地を持っている知り合いが、偶然自分の好みに合う土地を持っている可能性は低いです。
むしろ、近しい関係だからこそはっきりと要望を伝えきれず、理想から遠い土地を押し付けられてしまう可能性もあります。
また、関係性の深さに関わらず、大きなお金を動かす取引はトラブルに発展しやすいので注意が必要です。売買契約や契約書類を作り込む必要があるため、かえって時間がかかることもあります。
特に、不動産会社を介さない取引はトラブルのリスクが高いため、あまりおすすめできません。
立て看板経由での問い合わせ
気になるエリアを動き回り、自分の足で空き地を探すという方法もあります。
実際に現地の状況を見ることで、周辺環境などをチェックできるのが最大のメリットです。
とはいっても、自分の足を使った土地探しは時間がかかります。
必ずしも気になるエリアに条件の合う空き地があるとは限りません。
また、苦労して見つけた空き地の連絡先も、多くの場合、土地オーナーから売却の仲介を受けた不動産会社のもの。
完全に個人で土地を売り出している人は少ないので、労力を考えると先に不動産会社で土地を探して、気になる土地を見に行く方が、土地探しの労力を軽減できるでしょう。
土地探しの注意点とは?
土地探しを始める前に予算を決める
注文住宅の購入では、基本的に土地も注文住宅もローンで購入します。
金融機関から貸してもらえる融資額には限りがあるため、まずは「自分はいくらのローンを組めるのか」「頭金としていくらまで出せるのか」を計算しておきましょう。
使える予算がわかっていれば、「土地の価格は○万円まで」といった基準を作ることができます。
条件の良い土地でも、予算オーバーだと結局住宅の建築費を節約することになってしまうので、余裕を持った金額にすることが重要です。
セットバックが必要な土地は工事費用が別途必要
建築基準法には、「幅4メートル以上の道路」に「2メートル以上接している土地」のみ新しく建築できるというルールがあります。
上記の条件をクリアしていない土地を購入した場合、「セットバック」という道路の拡張工事が必要です。
セットバックをすると土地の面積は狭くなりますし、工事費用は全額土地のオーナーが負担することになります。苦労して工事した道路も、道路を管理している国や自治体へ寄付することになるケースが多いので、セットバックが必要な土地を購入する際は注意しましょう。
新居の仕様や設計は土地の制限・条件次第
同じ広さの土地でも、建ぺい率や容積率によって建てられる家の広さが変わります。
また、既存の建物を建て替えられない「再建築不可」や、ハウスメーカーが指定されてしまう「建築条件付き土地」などもあるため、注意が必要です。
土地の価格や広さといった表面的な情報だけでなく、「土地をどこまで利用できるのか」「建築の妨げになる制限・条件がないか」にも注意を払いましょう。
土地の代金以外に手数料の支払いも必要
注文住宅を建てる場合、土地や建物の施工費だけでなく、以下のような税金・手数料の支払いも必要です。
・不動産取得税
・固定資産税・都市計画税
・登記の費用
・司法書士への依頼量
・住宅ローンの事務手数料・保証料
・団体信用生命保険・火災保険の保険料
・仲介手数料
・引っ越し費用
・新居で使う家具・家電の費用
土地のチェックポイント
金額の妥当性
相場より高い土地も、逆に相場より安い土地も、できれば避けましょう。土地の価格は、立地や需要で決まります。
とくに、空き地は建物の影響を受けないので、相場より高い土地も安い土地も、何らかの問題を抱えている可能性が高いです。
安くてお得でも、セットバックが必要だったり、古家付きで再建築が不可だったりすると、注文住宅の仕様が狭まってしまいます。
日当たり・風通し等の環境面
まったく同じ仕様の注文住宅も、「どこに建てるか」で日当たりの良さや風通しが大きく変わってくるので、あらかじめ現地を訪れて採光と通風をチェックしておきましょう。
災害に対する強さ
最悪の場合引っ越しできる賃貸と違って、注文住宅は災害に巻き込まれたときの影響が大きいです。台風・地震・津波・大雨といった災害による被害を最小限に抑えるためにも、
・地盤の強さ(埋立地や以前川・畑だった場所を避ける)
・水はけの良さ
・周辺の水場との高低差
・大きな川や海までの距離
・斜面の急な山への距離
などを確認しましょう。
最低限の情報は、自治体のハザードマップや古地図をチェックすれば調べられます。また、不動産会社の担当者から情報収集したり、地盤調査を頼んだりするのもおすすめです。
治安の良し悪し
日本は比較的治安の良い国ですが、地区を一つまたいだだけで治安が大きく変わってしまうという地域もあります。
治安の悪い地域だと、犯罪やもめごとにも巻き込まれやすくなりますし、ゴミが散らかっていたり騒音や臭いが気になったりするケースもあるので、できるだけ治安の良いエリアを選ぶことも大切です。
気になる土地を見つけたら、時間と日付をずらして複数回周囲を散歩して交通量や街の雰囲気を確かめましょう。周辺を散歩してみて、ポイ捨ての多さやゴミ捨て場のきれいさをチェックするという手もあります。
通勤・通学や買い物のしやすさ
広さや価格が魅力的でも、通勤・通学・普段の買い物が不便だと暮らしづらくなってしまいます。
基本的に、立地の良い土地は価格も高いのである程度の妥協も必要ですが、「交通の便について妥協できるライン」を前もって決めておけば、土地選びの大きな失敗を避けられるでしょう。
小児科・公園等子育てに必要な施設・サービスの充実度
子育てを考えているなら、子育てに役立つ施設やサービスの充実度を調べることをおすすめします。
・評判の良い小児科・産婦人科がある
・保育園・幼稚園が豊富で待機児童が少ない
・高校や大学の選択肢が多く通学時間も短い
・大きな公園がある
・一時保育やシッター等を安く利用できる
など、予算とのバランスを考えて、子育てしやすい土地を選びましょう。
まとめ
注文住宅の利便性や快適さは、「どこに住むのか」で決まります。土地探しで妥協すると後悔が長く続くため、自分たちの予算や基準に合う土地を見つけることが大切です。
ただし、土地を自力で探していると、時間がいくらあっても足りません。土地の購入に関するトラブルを避けるためにも、不動産会社に相談したほうが安心なので、土地探しは不動産会社経由で進めましょう。
コラム監修者情報
木場昌也
二級建築士/ 1級施工管理技士
【現場管理】注文住宅・店舗 110棟
【販売】注文住宅 79棟
入社歴23年。8年現場監督経験を経て営業職に。
震災後は県内の品質管理、着工数の平準化を図るため工事管理職に従事。また注文住宅の安定供給、品質賞の受賞に携わる。
その後、ZEH普及、高気密・高断熱商品の開発、販売、店長職を兼任。