住宅購入の際の税金を減らす住宅ローン控除 控除を受けるための条件や流れを徹底解説
住宅ローン控除は、住宅を購入する人やリフォームする人の負担を減らすために国が定めた制度です。
年末時点の借入残高の金額に応じて、所得税や住民税の一部を軽減してくれます。
これを利用すると毎年の税金額が数十万違ってきます。
住宅ローンを利用して住宅を購入する人は、ぜひ利用しましょう。
この記事では、住宅ローン控除の概要から適用の条件、対象となるローンの種類、計算方法などをまとめてお伝えします。
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、正式には「住宅借入金等特別控除」という制度の通称です。
住宅を新築したり、新築住宅を購入したりした人だけでなく、要件に当てはまれば中古住宅を購入した人や、増改築・リフォーム工事を行った人にも適用されます。
10年以上の住宅ローンを組んで住宅の取得や増改築・リフォーム工事を行うと、所得税や住民税の一部が控除されます。
減税額は年末時点における借入残高の1%で、年間上限は40万円です(平成26年3月までに購入した人は年間上限20万円)。
「住宅ローン減税とどう違うの?」という疑問をよく聞きますが、実はこれらはまったく同じものです。
どちらも通称の一つなので、どちらを使っても構いません。
住宅ローン控除の適用期間
下の表のように、住宅ローン控除の適用期間は10年間ですが、令和元年10月から令和2年12月までに居住を開始した人はプラス3年間控除を受けることができ、控除期間が13年間となります。
消費税率の引き上げを受け、期間が拡充されました。
居住開始時期 | ~平成26年3月 | 平成26年4月~令和3年12月 | |
うち、令和元年10月~
令和2年12月 |
|||
控除適用期間 | 10年間 | 10年間 | 13年間 |
控除率 | 1% | ||
最大控除額 | 2000万円×1%×10年=200万円 | 4000万円×1%×10年=400万円 | 1~10年目
4000万円×1%×10年=400万円 11~13年目 最大約80万円 |
住民税からの
年間控除額 |
前年度課税所得×5%で上限9.75万円 | 前年度課税所得×7%で上限13.65万円 | 前年度課税所得×7%で上限13.65万円 |
新築・未使用の長期優良住宅、低炭素住宅の場合は、平成26年3月までの場合3,000万円、それ以降の場合5,000万円に上限が拡充されます。
住宅ローン控除の適用条件
住宅ローン控除には適用条件があり、どんな住宅でもどんな人でも控除が受けられるわけではありません。
まず基本的な要件として、次のようなポイントが挙げられます。
●自ら居住すること
●床面積が50平米以上 ●住宅ローンの借入期間が10年以上 ●合計所得金額3,000万円以下(3,000万円を超えた年は適用外) |
住宅ローンの適用条件には工事日から6ヵ月以内に自ら居住することが定められており、別荘やセカンドハウス、賃貸住宅などは対象となりません。
また、親が住むために子供が建てた家も対象とはなりません。
ただし床面積の2分の1以上が自己居住用であれば、一部を賃貸住宅や店舗として利用していても、住宅部分については住宅ローン控除が受けられます。
床面積は戸建て住宅の場合壁の中心から計測する壁心(へきしん)で計算されますが、マンションなどの共同住宅の場合は壁の内側のみを計測する内法(うちのり)で計算されます。
一般的な建築プランでは問題ないはずですが、狭小プランを検討する人は注意が必要かもしれません。
また、年収が一定以上の人は、控除の対象外となります。
これらのほかに、住宅の種類による適用条件も定められています。
それでは、適用を受けるための条件をケースごとに見ていきましょう。
新築住宅の場合
新築住宅の場合、注文住宅でも建売住宅でも、分譲マンションでも対象となります。
つまり、住宅の種類を問いません。土地と建物をセットで販売する建売住宅や、土地を購入して2年以内に新築する注文住宅の場合、土地の購入金額も住宅ローン控除の対象とみなされます。
中古住宅の場合
中古住宅の場合は、やはり建物とセットで取得する土地の購入費も控除の対象となります。ただし、せっかく購入した住宅がすぐに傷んでしまわないよう、築年数と耐震性に対して次のような基準が設けられています。次のいずれかに当てはまっていれば、住宅ローン控除の適用が可能です。
■築年数
●耐火建築物以外(木造など) : 築20年以内
●耐火建築物(鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造など) : 築25年以内 |
■耐震性
次のいずれかによって、現行の耐震基準に適合していることを確認した住宅
●耐震基準適合証明書(国土交通大臣の定める耐震基準を満たしていることを建築士等が証明したもの) ●既存住宅性能評価書(耐震等級1以上) ●既存住宅売買瑕疵保険(住宅瑕疵担保責任保険法人による中古住宅の検査と保証がセットになった保険)の加入(現行の耐震基準に適合していることが加入要件) |
増改築・リフォーム工事の場合
増改築の場合、100万円以上の工事費がかかれば適用が受けられます。
省エネ・バリアフリー改修なども対象となりますが、これらの工事はリフォーム減税(特定増改築等住宅借入金等特別控除)の適用も受けられるので、どちらがお得になるか比較してみましょう。
住宅ローン控除とリフォーム減税の重複利用はできません。
住宅ローン控除の対象となるローン
住宅ローン控除の対象となる住宅ローンは、次のいずれかから借り入れたものに限られます。
●銀行
●農協・信用金庫・信用組合 ●住宅金融支援機構 ●地方公共団体 ●各種公務員共済組合 ●勤務先 |
ただし、勤務先のから借り入れる場合、市場金利を換算して定められた0.2%以上の金利が条件となります。
2016年12月31日以前は、1%以上が条件でした。
この金利条件に適合していても、親族や知人などの個人から借り入れた資金や、親族や自分が役員となっている企業からの借り入れは住宅ローン控除の対象となりません。
住宅ローン控除の計算方法
実際に住宅ローン控除を受ける場合、次のような計算で控除額が算出できます。
住宅ローンの年末残高×1%=控除額 |
つまり年末残高が3,500万円の場合、控除額は次の通りです。
年間控除額の上限は40万円(新築・未使用の長期優良住宅、低炭素住宅の場合は50万円)なので、それより大きい金額になれば控除額は40万円となります。
端数が出る場合は、100円未満切り捨てとなります。
3,500万円×1%=35万円 |
たとえば、年収500万円の人がこの条件で住宅ローン控除を受けると、どのように控除が適用されるのか見てみましょう。
所得税の控除条件はさまざまなので人によって大きく変わりますが、一般的に年収500万円の人の所得税は約13万8千円、住民税は約24万円です。
●所得税からの控除額 13万8千円-35万円=-21万2千円
マイナスとなるので全額適用され、控除額は13万8千円 ●住民税からの控除額 上限額13.65万円 < 控除額の残り21万2千円 上限額以上なので上限額が適用され、控除額は13万65百円 ●合計控除額 所得税控除13万8千円+住民税控除13万65百円 =27万45百円 |
このように、控除額のすべてを引き切れないケースも少なくありません。
実際に自分ではどのくらいの控除が受けられるのか、住宅ローンの返済予定表をもとにシミュレーションしてみましょう。
住宅ローン控除の申し込み手続き
住宅ローン控除は住宅ローンを使って住宅を購入したからといって、自動的に適用されるわけではありません。
初めて住宅ローン控除の適用を受けるときには、確定申告で手続きをする必要があります。
該当の住宅に入居した翌年の確定申告期間に、納税地の税務署長宛てに次のような書類を提出しましょう。
1. 確定申告書A(第一表と第二表)
税務署に置いてあるほか、国税庁のサイトからも入手可能。 2. (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 税務署に置いてあるほか、国税庁のサイトからも入手可能。 3. 住宅ローンの借入残高証明書 金融機関から送付される。 4. 源泉徴収票 勤務先から入手。 5. 土地建物の登記事項証明書 法務局で入手。 6. 建築請負契約書もしくは売買契約書のコピー 不動産会社や建築会社との契約時に受け取る書類。 7. 本人確認書類 「マイナンバーカード」または「マイナンバー通知カード、マイナンバー記載の住民票+運転免許証やパスポート等の本人確認書類」 |
住宅ローンの借入残高証明書は、申告の数か月前に住宅ローンを借り入れた金融機関から毎年送られてきます。
失くさないよう手元にとっておきましょう。
もし失くしてしまった場合は、金融機関に相談すると再発行してもらえます。手元に見当たらなくても、諦めずに相談してください。
中古住宅や認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の場合は、これらにプラスして次のような書類も必要になります。
いずれも契約した不動産会社で交付してもらえるので、用意しておきましょう。
●一定の耐震基準を満たす中古住宅の場合
耐震基準適合証明書または住宅性能評価書のコピー ●認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の場合 認定通知書のコピー |
確定申告の期間は、曜日などの関係で年によって異なります。
概ね2月半ばから3月半ばで受付を行っており、その時期に入ったら自分で都合の良いタイミングを見計らって申告を行わなければなりません。
2年目以降は手続きが簡単になり、会社員などの給与所得者は会社が行う「年末調整」で手続きが完了できます。
その際は、年末調整の書類提出時に「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書等」「(住宅ローンの)年末残高証明書」を提出しましょう。
「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書等」は、最初の年に手続きをすると税務署から2~10年目の控除に使えるよう9枚がまとめて送られてきます。
毎年必ず必要になるものなので、失くさないよう手元に大切に保管しておきましょう。
まとめ
こちらでは住宅購入者が受けられるお得な減税制度「住宅ローン控除」についてご紹介しました。
住宅ローン控除は累計で最大400万円もの税金が節約できる、非常に効果の大きな減税制度です。
住宅購入を検討している人は制度の概要を理解し、忘れないよう手続きしてしっかりと恩恵を受けましょう。
コラム監修者情報
木場昌也
二級建築士/ 1級施工管理技士
【現場管理】注文住宅・店舗 110棟
【販売】注文住宅 79棟
入社歴23年。8年現場監督経験を経て営業職に。
震災後は県内の品質管理、着工数の平準化を図るため工事管理職に従事。また注文住宅の安定供給、品質賞の受賞に携わる。
その後、ZEH普及、高気密・高断熱商品の開発、販売、店長職を兼任。